『メタバースとWeb3』

メタバースとWeb3 読書メモ - ビジネス

1.書籍情報

國光宏尚著、エムディエヌコーポレーション、2022年3月発行、200ページ

2.購入した経緯

以前『NFTの教科書』を読んだ際、國光さんの章が分かりやすくてためになった。國光さんが単独でも本を出していると知り、本書を購入。

3.読書メモ

メタバース等に関する本や雑誌は最近よく出ているが、本書は著者自身の業界経験から書かれた本であり、独自の整理や見解が参考になる。

■「メタバースを体験できる仕組みやサービスにはVR、 AR、MR、XR、さらにミラー・ワールドなどがあり、複雑でわかりにくい状態になっています。 VRとARの違いはわかるけれどもMR、XR、ミラー・ワールドと言葉が雑然としてきてよくわからなくなっている、という感じなので、それらをリブランディングしたのがメタバースなのです。 ちなみにWeb3は仮想通貨、暗号資産、ブロックチェーン、クリプトのリブランディングです。これらも名称が変わったり、種類がいろいろあったりしてややこしい。しかも、仮想通貨、暗号資産というと何かうさん臭いイメージもあります。そこで、これらをリブランディングしたのがWeb3です。」(19ページ)

■「Web2.0はスマホ、ソーシャル、クラウドによって生じ、そこで大きな果実を得た企業がやったことはスマホファースト、ソーシャルファースト、クラウドファースト。そしてWeb3.0はXR (メタバース)、ブロックチェーン(Web3)、AIによって誕生し、そこで大きな果実を得る企業は、XR(メタバース)ファースト、ブロックチェーン(Web3) ファースト、AIファーストを実行した企業になるということです。」(50ページ)

■「大学などで「いかにVR空間においてリアルを実現するか」という研究が多く行われてきましたが、私は「そうじゃないな」と常に感じていました。 これはゲームの開発から学んだことですが、ソード・オブ・ガルガンチュアは剣載のリアリティーを徹底的に追求したことで、VRの中で自分自身の身体を使って刀でリアリティーをもって斬り合うことができるようになりました。 しかし、ユーザーが望んでいたのは「VRの中でリアルなチャンバラを体験する」ではなく「VR世界であの好きなキャラになりきった体験をしたい」ということでした。人気作品のあの技やこの技を、自分の身体でやってみたかった。 結果として「俺すごい」「俺強い」という感覚を体験したい。 実際、「あの技を再現」みたいな形で楽しんでいるプレイヤーの方はたくさんいらっしゃいます。「バーチャルでしかできないことをリアルに感じる」のがバーチャルリアリテイーの本質なのだ、と学びました。」(76ページ)

■Web1.0:一方通行の時代(1990〜2004)、Web2.0:双方向の時代(2005〜2020)、Web3.0:分散の時代(2021〜)(86ページ)

■「強大すぎる力は暴走するリスクを保持します。分散型なDecentralized (非中央集権)のプロトコルは彼らからユーザーに力を戻します。多くのブロックチェーンプロジェクトが巨大プラットフォーマーからのdecentralizationを目指しています。通貨だけでなく、通信もクラウドもコマース、メディア、マーケットプレイスも、ネット業界はこれまで既存産業をdisruptすることで事業拡大を続けてきました。今度はdecentralizedなプロトコル、サービスによってプラットフォーマー側がdisruptされる側に回る可能性が出てきているのです。 世界中のどこにいるユーザーでも、仲介者なしで暗号資産を取引することができるUniswapような、「分散型○○」という事業は今後さらに注目され一般化していくことでしょう。」(96ページ)

■「NFTにするのならば、ただの音源だと価値がなくて、ストーリーがあって、ストーリーに価値を感じるもの。これは、集団幻想かもしれないですが、そう思わせられるものが合うと思います。 たとえば、頭に思い浮かんで、最初に構想したばかりの音源や映像、デザインです。 もちろん完成形と比べると、まだ荒削りなわけですが、「最初」というのは、唯一のものですので、NFTに向いています。一方で、完成形の作品はストリーミングやYouTubeに出せばいいのです。 既存のビジネスをやりつつ、「限定もの」をNFTで売っていく方法が今のイーサリアムの環境としては合っていると思います。」(109ページ)

■DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の略で、最小構成は「ビジョン、それに賛同する人が集まってできたコミュニティ、独自トークン」。一番有名なDAOはビットコインやイーサリアム。DAOの本質は「インセンティブ革命」。つまり、プロジェクトに関わったすべての人が金銭的なメリットをもらえるようになっていく。そのインセンティブによって、それぞれの人が、自律的に組織やプロジェクトの成功のために動くというのが、一番のコンセプト。
一方、スタートアップ(株式会社)の一番大きなインセンティブはストックオプション。ストックオプションや株を持っているメンバーは、より自律的にコミットして、その組織の成功のために動く。ただ、いままでのストックオプションの仕組みは、創業メンバーをはじめ、一部のコアなメンバーに限られていたし、株式も一部のベンチャーキャピタルがほとんどを持っていた。つまり、従業員以外の関係者、さらにユーザーの貢献には見返りはなかった。(116〜119ページ)

■「ここでポイントになるのが二つ目のWeb3の最重要概念“Power to the people”です。 これまでも述べてきましたがWeb3は既存のWeb2.0のビジネスモデルからクリエイターに有利な方向に導くものです。この背景には個人の作り手が、巨大プラットフォームに頼らずに、ファンと直接つながって稼ぐことができる経済圏、クリエイターエコノミーの動きがあります。Web3は、作り手とユーザーとが所有するインターネットであり、トークンが結節点となります。これにより、これまで巨大プラットフォームが握っていたオーナーシップを個人の作り手たちの手に取り戻すことが可能になるのです。」(146ページ)

4.購入前の自分に薦めたい度

★★★★☆(5段階中4)

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