『武器になる哲学』

武器になる哲学 読書メモ - ビジネス

1.書籍情報

山口周著、KADOKAWA、2018年5月発行、368ページ

2.購入した経緯

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』に感動してまとめ買いした山口周シリーズのひとつ

3.読書メモ

本書のように説明してもらえると、特にビジネスパーソンになぜ哲学が必要かがよく分かる。本書を入口にして、特に興味を持ったコンセプトについて深掘りしていくのがよさそう。以下、幾つかメモ。

■「難しいのは「新しい考え方・動き方」を「始める」ことではなく、「古い考え方・動き方」を批判的に捉えて、これを「終わらせる」ことなんです。(中略)「自分たちの行動や判断を無意識のうちに規定している暗黙の前提」に対して、意識的に批判・考察してみる知的態度や切り口を得ることができる、というのも哲学を学ぶメリットの一つとして挙げられると思います。(13ページ)

■「彼ら(イノベーター)は「イノベーションを起こしてやろう」と思って仕事をしているのではなく、必ず具体的な「解決したい課題」があって仕事をしています。(中略)「課題設定の能力」が重要だということになるわけですが、ではどうすれば「課題設定能力」を高めることができるのか? 鍵は「教養」ということになります。なぜかというと、目の前の慣れ親しんだ現実から「課題」を汲み取るためには、「常識を相対化する」ことが不可欠だからです。(14ページ)

■「高級品・ブランド品が市場に提供している便益は「ルサンチマン(やっかみ)の解消」と考えることができます。ルサンチマンを抱えた個人はルサンチマンを解消するための、いわば「記号」としてこれらのブランド品や高級車を購入するわけですから、ルサンチマンを生み出せば生み出すほど、市場規模もまた拡大することになります。ラグジュアリーブランドや高級車は、毎年のようにコレクションや新車を出してきますが、これは「ルサンチマンを常に生み出すため」と考えてみるとわかりやすい。つまり「最新のモノ」を常に市場に送り出すことによって、「古いモノ」を持っている人にルサンチマンを抱えさせているわけです。(75ページ)

■「不確実なものほどハマりやすい」(94ページ)

■「欲求系=ドーパミンにより特定の行動に駆り立てられ、快楽系=オピオイドが満足を感じさせて追求行動を停止する。」(95ページ)

■「事実と認知とのあいだで発生する不協和を解消させるために、認知を改める。これは人間関係などでもよくある話です。好きでもない男性から、あれこれと厚かましく指示されて手伝っていたところ、そのうち好きになってしまった、というような話がありますね。これも認知的不協和のなせるわざと考えられます。「好きではない」という認知と「あれこれと世話している」という事実は不協和を発生させます。「あれこれと世話している」という事実は改変できないのですから、不協和を解消させようとすると「好きではない」という気持ちを、「少しは好意があるかも」と改変してしまった方が楽です。(119ページ)

■ミルグラムの「アイヒマン実験」からの洞察。①人が集団で何かをやろうとするときにこそ、その集団のもつ良心や自制心は働きにくくなる、②自分の良心や自制心を後押ししてくれるような意見や態度によって、少しでもアシストされれば、人は「権威への服従」を止め、良心や自制心に基づいた行動をとることができる。(127ページ)

■「もし、社会や組織が公正で公平であるのであれば、その中で下層に位置付けられる人には逃げ道がありません。(中略)序列の基準が正当ではない、あるいは基準は正当であっても評価が正当になされていない、と信じるおかげで私たちは自らの劣等生を否定することができます。(中略)私たちが安易に「究極の理想」として掲げる「公正で公平な評価」は、本当に望ましいことなのか。仮にそれが実現したときに「あたなは劣っている」と評価される多数の人々は、一体どのようにして自己の存在を肯定的に捉えることができるのか。(中略)「公正」を絶対善として奉る前に、よくよく考えてみる必要があると思います。(269ページ)

■「言葉を用いて自由に思考しているつもりが、その言葉が依拠している枠組みに思考もまた依拠するということになってしまいます。私たちは本当の意味で自由に思考することができない、その思考は私たちが依拠している何らかの構造によって大きな影響を不可避的に受けてしまう、これが構造主義哲学の基本的な立場です。ソシュール自身は言語学者であるにもかかわらず、構造主義哲学の始祖と呼ばれるのはそのためです。ちなみに「私たちは私たちが依拠している構造によって考えることしかできない」ということを、別の角度から指摘したのがマルクス、ニーチェ、フロイトらでした。かれらはそれぞれ、私たちの思考が「社会的な立場」「社会的な道徳」「自分の無意識」などによって不可避的に歪められてしまうことを指摘」(320ページ)

■「現在のグローバル企業においては、「それは何の役に立つの?」という経営陣の問いかけに答えられないアイデアは、資金供給を得られないことが多い。しかし、先述したこれらの事例によれば、世界を変えるような巨大なイノベーションの多くは「何となく、これはすごい気がする」という直感(ブリコラージュ)に導かれて実現している」(337ページ)

■「二項対立の枠組みはとても便利なので、企業経営や実社会の問題を整理する際によく用いられます。よくあるのは「強みと弱み」や「機会と脅威」や「デザインとコスト」などですが、これらの枠組みを設定することによって、かえって思考の広がりが制約を受けてしまうということもあります。そのようなときには、二項対立の枠組みそのものを換骨奪胎してみる「脱構築」を考えてみてはいかがでしょうか。」(345ページ)

■「未来を予測する最善の方法は、それを「発明」することだ」(byアラン・ケイ)」「本当に考えなければいけないのは、「未来はどうなりますか?」という問いではなく「未来をどうしたいか?」という問いであるべきでしょう。」(346、348ページ)

4.購入前の自分に薦めたい度

★★★★★(5段階中5)

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