1.書籍情報
山口周著、講談社、2021年3月発行、290ページ
2.購入した経緯
山口周シリーズ。
3.読書メモ
7名の識者との対談形式。各章1名。各識者の専門分野を基にしたリベラルアーツについての対談。
なお、出口治明さんとの対談は同氏の大学の宣伝のようになっているので読み飛ばしてもよいと思われる。
■コンサル調査に基づき作られた「正しく」て「強い」はずの日本の携帯電話は、iPhoneのように感覚的、直感的に「カッコいい」と感じる商品が出てきた途端に足元をすくわれるように負けてしまった。各社がサイエンスに基づいて「正しい」と信じて開発してきたものは、どの会社にとっても「正しい」わけで、それは差別化につながらない。「正しさ」はもう「強さ」にはならない。正しさは、もうコモディディ。(19ページ)
■「イギリスの歴史家、ジョン・アクトンは、オックスブリッジの学生が一所懸命に歴史を勉強するのは、古代の勉強をしたいのではなく人間の勉強をしているのはというふうに書いています。人間を知ることは「ヒューマニティ」に対する洞察を磨くことにつながり、人間的な成熟にも関わります。歴史というのは、人間を知るための題材としてはこれ以上ないものだと思います。」(72ページ)
■「全世界的に見て、サービス産業のユーザーは6〜7割以上が女性です。その女性の欲しいものが、日本経済を牽引していると自負する50代、60代の男性にわかるはずがありません。(中略)サービス産業の時代には女性に活躍してもらわなければ良いアイデアが出ない」(90ページ)
■「Knowledge is Power(知識は力なり)」byフランシス・ベーコン(102ページ)
■不立文字(ふりゅうもんじ):悟りの境地は言葉で教えられるものではなく、修行を積んで、心から心へ伝えるものであるということ。言葉や文字に囚われてはいけないという禅宗の基本的立場を示した語。(159ページ)
■「「たとえ損得計算の結果がプラスでも、それは善くないと価値判断して抑止できるかどうか」、ここにリーダーとしての真の資質があるのだと考えています。」(188ページ)
■「リーダーをめざす方に提案したのは、まず徹底して理論理性的に損得計算をし、そのうえでその結果を実践理性的に価値判断して自律的に実践してほしい」(195ページ)
■「起業家精神とは何かということについて、簡単な思考実験をすることができます。例えば、新しいプロジェクトを動かすかどうかを決める時に、経営者は二つの問題に直面します。一つは、このプロジェクトが儲かるかどうか。損得計算の問題です。もう一つは、このプロジェクトは正しいか、好きかどうか。価値判断の問題です。 すると、儲かるし正しいという場合、これは絶対やりますよね。ただし儲かることが予想できる中ではイノベーションはまず起こらない。逆に、儲からないし正しくないということはやりません。そして、儲かるけど正しくないことはやってはいけません。となると、儲からないかもしれないけど正しい、好きだということにおいてイノベーションが起きるわけです。 そう考えると、起業家精神とは価値判断のことなのだとも言えます。客観的なデータではよくないと出ているが、主観的に「これは絶対に善い」と判断し、その責任を取る覚悟で新しいプロジェクトを実行できるかどうかです。」(204ページ)
■「文化人類学者のルース・ベネディクトは有名な『菊と刀』の中で、欧米の「罪の文化」に対し、日本は「恥の文化」であると分析しています。欧米ではキリスト教と聖書が行動の規範になっていて、それに背くことは「罪」であると考え、罪を犯さないよう自分の行動を律します。日本では神や仏よりも他人の目、世間に対する意識の方が強いため、世間の「恥」とならないように行動するわけです。」(247ページ)
■「イノベーションというのは常に「それまでは当たり前だと思っていたことが、ある瞬間から当たり前ではなくなる」という側面を含んでいます。つまりイノベーターには「当たり前」を疑うスキルが必要なのです。」(272ページ)
4.購入前の自分に薦めたい度
★★★★☆(5段階中4)