『「仕事ができる」とはどういうことか?』

「仕事ができる」とはどういうことか? 読書メモ - ビジネス

1.書籍情報

楠木建、山口周著、宝島社新書、2021年7月発行、296ページ

2.購入した経緯

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』に感動してまとめ買いした山口周シリーズのひとつ

3.読書メモ

楠木先生がどうしても武藤敬司に見えてならない。

以下、大量にメモ。

■「洗濯板とか水汲みがなくなったときに、「衣食足りて礼節を知る」という方向にいくのか、それとも「小人閑居して不善をなす」という方向にいくのか。ここに社会やその人の分かれ目があると思うんですね。 ネット言説には「小人閑居して不善をなす」の方向に転がっていく面がある。」(55ページ)

■「物事の成否の理由を外的環境に求めるのが早すぎる」(71ページ)

■男のマウンティングの仕方:①家柄(変えられない)、②偏差値(今から変えられない)、③スキル(これをいじるしかない)(71ページ)

■マクレランドが見つけた成功している外交官に共通して見られる行動のパターン・モノの考え方のパターン:①対人感受性が非常に強い、②根源的な人間に対する信頼、③政治的な力学に対する嗅覚
これらはスキルではなく、一方でパーソナリティでもない。このよくわからないものを「コンピテンシー」と名づけたのが、現在の人事におけるコンピテンシーの発端(79ページ)

■昨今のプログラミングのように「旬のスキル」というものはいつの時代にも必ずあるが、いずれはそのスキルの保有者が十分に出てきて、平均レベルにお金を払う人はいないということになる(85ページ)

■「読書それ自体が事後性の高い行為ですね。読書が習慣になっている人にとっては、これほどコスト・パフォーマンスが高い知的活動はほかにないくらいですけど、それもまた事後に初めてわかること。まとまった本を読むこと自体に難しさを感じる人は読書の効用を体感できない。だからますます本を読まなくなる。事後性のジレンマから悪循環が生まれる。」(88ページ)

■「才能というのは自分であとから気づくもの。つまり、さっきの話でいう事後性が高い。スキルの場合は事前に自らが意図して「こういうスキルをつけよう。だからこういう方法をとって」となるのに対して、センスとか才能というのは「自分にこんな才能があったんだ」ってある瞬間に気づくという面があると思うんですよ。」(96ページ)

■「大きな会社には経営企画部門とかそういう部署があって、しばしばSWOTTERの巣窟になっている。(中略)要するに、分析調査というのは仕事ができない人にとってとてつもない吸引力を持っているんですね。あっさり言ってしまえばテンプレート上の「作業」。仕事はできなくても、とりあえずの作業はできる。で、なんとなく人に見せられる資料という成果物はできる。人に示すことのできる形でブツが出てくる。こういう「作業の誘惑」ってすごい強いんですね。しかし、それは経営でも戦略でもなんでもない。」(110ページ)

■「初めのうちは迷ったらとにかくやってみる。ところが、いつまでたってもそのやり方を続けている人というのは、たぶんセンスがない。「これは自分の領分ではない」と思うことには手を出さないという「土俵感」。「それが自分の土俵だ」という感覚がだんだんはっきりとしてくる。これもまた仕事ができる人の特徴だと思います。断るのも能力のうち、ということです。」(125ページ)

■(原田さんのマクドナルド立て直しについて)一つひとつの打ち手は陳腐だが、その並べ方、時間軸でのシークエンスに巧拙が出る(140ページ)

■「「ビンタしてから抱きしめる」と「抱きしめてからビンタする」の違い。競争戦略は他社との違いをつくろうとするものですが、違いの正体にしても順番の問題だというのが僕の年来の主張です。」(165ページ)

■「成果に至るシークエンスを経営者が描いていて、そのシークエンスを構成するピースに欠けている要素がある。その欠けている要素が自社だけでは用意できないから提携やら合併やらによって埋め合わせる。それを総称して「シナジー」ということになるわけですが、やたらと「シナジー」と叫んでいるだけの人は、そのシークエンスが描けていないんでしょうね。」(169ページ)

■(最旬ビジネスワードについて)「どれも言っているのは当たり前の話で、それをさも新しいコンセプトのように仕立て直してリボンをかけて売り込もうという人が後を絶たず(以下略)」(189ページ)

■「実際にはセンスというのは大いに事後的、後天的なものだと思います。みんなそれぞれに試行錯誤のなかで時間をかけて練り上げていったものですね。センスを磨くための教科書や標準的な方法がないので、いかにも生まれたときに決まっちゃってるみたいに見えるんですけど、本当はそんなことない。」(226ページ)

■センスとは「具体と抽象の往復運動」。知識や経験を具体のままでストックしておくとほかの状況に適用できないので、これだと単なる「もの知り」でしかないわけですけど、得られた経験や知識を抽象化してパターンとして蓄積しているから個別具体の状況にそれを適用できる。(252ページ)

■「あれ(才能診断ツール)で自分の強みを再確認して、さらに強固な独善に陥っていくというのは、とても危険な話だと思うんです。人間には確証バイアスがありますから、もともと思い込んでいることが危機に晒されたときにこそ、余計にああいうツールに頼って思い込みを守ろうとする傾向があります。そういうものに囚われて短兵急に自分の強み・弱みを確定させてしまって、場数を増やす、いろんな体験をするということをせずに、抽象的なデータに頼って自分のポジショニングを決めるというのは、とても機会損失が大きいと思います。」(267ページ)

■「仕事は常にプロキシ(注:成果につながらないが、何かやっている感はある代わりの作業)に取り囲まれている。このことをよく踏まえて、それでも成果への筋道を通して仕事をする。昔も今もこれからも、これが「仕事ができる」ということだと思います。」(283ページ)

4.購入前の自分に薦めたい度

★★★★★(5段階中5)

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