『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』

生命科学的思考 読書メモ - ビジネス

1.書籍情報

高橋祥子著、NewsPicksパブリッシング、2021年1月発行、232ページ

2.購入した経緯

山口周シリーズの『思考のコンパス』にて本書の紹介があり、興味をもったため。

3.読書メモ

「個体として生き残り、種が繫栄するために行動する」という生命原則から、人生や経営を読み解こうとする面白い作品。

■「生命原則と、人生や経営には共通の仕組みが多いと感じるようになりました。そもそも博士号を意味する「Ph. D」はDoctor of Philosophy(哲学博士)が語源となっており、論理学、自然物理学、生物学、倫理学、政治学など広い意味を含む哲学を意味することから、研究者には、「世の中のことを考える人」という意味があります。」(6ページ)

■「なぜ「死」という非連続性の創出が必要なのでしょうか。それは、生命が生きる環境が変化するからです。生命原則は、個体を取り巻く外界の環境が常に変化するものであることを前提に作られています。」(20-21ページ)

■「私たちは基本的に遺伝子に従った生命活動を無意識に実行していますが、自由意志が存在すると考えることで、実際の行動自体が変わる余地が生じます。「生命原則に歯向かう意志が存在する」と思うことそのものが、遺伝子に歯向う力になるということです。」(60ページ)

■「「時間条件を区切っておく」ことは重要です。というのも、実際には事業も研究も職業選択も結婚も生き方も、環境が変化し、あるいは情報が増え、自分も成長し、価値基準そのものが書き換わってしまうことによって当初決めた覚悟の根拠が薄れることは当然あり得ます。その前提で、たとえば職業選択にあたっても「1年間はここで頑張ることを決めておく」、起業するときに「少なくとも5年間は諦めないことを決めておく」など時間条件をつけておくとよいです。」(112-113ページ)

■「東京大学・池谷裕二教授も、「人間は、行動を起こすから『やる気』が出てくる生き物」「面倒なときほどあれこれ考えずに、さっさと始めてしまえばいい」と述べています。実際、脳の中でやる気に関係する淡蒼球という場所は、体を動かすことで活性化するという研究成果があります。」(124ページ)

■「「なぜヒトは努力しないといけないのか?」という問いへの答えは、宇宙にとっての平衡(エントロピー増大)と私たちの個体にとっての平衡(エントロピー減少)が異なるため、積極的にエネルギーを使って行動しないと個体としての形を保つことができないから、です。(中略)どんなに大きな企業であったとしても常に努力しないといけないのは、継続するためにはエネルギーを使って行動しないとエントロピー増大に巻き込まれて崩壊してしまうためです。」(136ページ)

■「多様性が成果に繋がるケースは、「デモグラフィック(注:年齢、性別、国籍など)の多様性」そのものが原因なのではなく、多様な知見・能力・価値観などの「タレントの多様性」が生まれることによって結果的に組織パフォーマンスを高めることができると考えられています。」(155ページ)

■「新規事業を立ち上げる際に未来を一切予測せずに「失敗の量を増やすため」まったくランダムに立ち上げる方が良いと言っているわけではありません。生命の進化もまったくランダムに行われているわけではなく、生き残ってきた生物の既存のDNAをベースに少しずつ変化を取り入れていますから、企業においても既存の事業の強みがまったく活きない無関係な事業を立ち上げることは自然の理にかないません。失敗を目指すことと、変化を取り入れていった結果の失敗を許容することは異なることです。」(160-161ページ)

■「「自分の言っていることを理解してくれないのは、相手が愚かだからだ」と、考えてしまうことはナンセンスです。その人の見える視野は得られる情報量によっても変わってくるものなので、「あの人は視野が狭い」などとあたかも先天的な素質のように優劣を決めつけるのではなく、自分に見えている視野を共有すればほとんどの問題は解決できます。」(177ページ)

4.購入前の自分に薦めたい度

★★★★☆(5段階中4)

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