『劣化するオッサン社会の処方箋』

劣化するオッサン社会の処方箋 読書メモ - ビジネス

1.書籍情報

山口周著、光文社新書、2018年9月発行、205ページ

2.購入した経緯

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』に感動してまとめ買いした山口周シリーズのひとつ

3.読書メモ

思い当たる話がたくさんあります。

■「哲学や思想というのは、平たくいえば「システムを批判的に思考する技術」です。」(29ページ)

■「「数」がパワーとなる現代の市場や組織において、構造的に最初に大きな権力を得るのは、いつも大量にいる三流から支持される二流ということになります。(中略)「数の勝負」に勝とうと思えば、三流にウケなければなりません。(中略)「数」をKPIに据えるシステムは、構造的な宿命として劣化するメカニズムを内包せざるを得ないのです。」(39-40ページ)

■「少数の二流の人間は、多数の三流の人間からの賞賛を浴びながら、実際のところは誰が本当の一流なのかを知っているので、地位が上がれば上がるほどに自分のメッキが剥がれ、誰が本当の一流なのかが露呈することを恐れるようになります。 したがって、二流の人間が社会的な権力を手に入れると、周辺にいる一流の人間を抹殺しようとします。」(41ページ)

■「転職すれば「会社の内側」に積み重ねてきた人的資本と社会資本は大幅に目減してしまうため、これが一種の「人質」となってロックインされてしまうわけです。 これが、経団連などが躍起になって兼業や副業を忌避したがる理由です。兼業や副業を許すと、従業員の人的資本・社会資本が会社の外側に形成されることになるので、その従業員をロックインしてしまう効果が弱くなってしまうのです。」(68ページ)

■「日本の大企業の場合、「あなたはここまで」と言われる年齢が40代以降なので、その時点で取れるキャリアオプションはほとんど残っていません。 結局は「辞めるよりも、今の場所でソコソコにやっていくしかない」ということになり、その場所から、華々しく活躍してどんどん昇進していく人たちを眺め続けなければならない。つまり「自分を拒否する組織に残り、拒否されない人々の活躍を見続ける」ことになるわけです。 その上で、組織内の序列階級は内部者にわかりやすく共有されますから、「あの人、あそこで止まっちゃったね」というのが明確にわかることになる。これは実に過酷な状況ではないでしょうか。」(76-77ページ)

■「予防医学者の石川善樹が提唱する「人生を四つのステージに分けるコンセプト」を引いてみましょう。 すなわち、春に当たるファーストステージの0~25歳は、基礎学力や道徳を身につける時期、夏に当たるセカンドステージの25~50歳は、いろんなことにチャレンジし、スキルと人脈を築くとともに、自分はなにが得意で、なににワクワクするのかを見つける時期、そして秋に当たるサードステージの50~75歳は、それまで培ってきたものをもとに自分の立ち位置を定めて世の中に対して実りを返していく時期、そして冬に当たるフォーステージの75~100歳は余生を過ごす時期、というモデルです。」(78-79ページ)

■「組織のポジションと能力や人格には、統計的にあまり相関がないことがわかっているからです。 筆者は前著『武器になる哲学』において、ほとんどの企業の人事評価は、このプロテスタントの予定説のようなもので、誰が高い評価を得るかはあらかじめ決まっており、その既定評価と帳尻が合うようにして、評価制度という茶番は運営されているという指摘をしました。(中略)「出世した人は、強欲で権力志向が強く、プライドを捨てて上司にオベッカを使ったから出世したのだ」ということになります。」(101-102ページ)

■「(かつて昭和基地南極越冬隊の隊長を務めた西堀栄三郎は、)日本からイノベーションがなかなか起きないのは、とてつもないことを考える若手が少ないということではなく、これを大きく支援できる大物、サーバントリーダーシップが欠如していると言っているのです。(中略)昨今の日本では、このような場合、どういうことが起きるかというと、おそらく白瀬中尉の計画について精査し、お門違いの知識や経験を持ち出しながら、「あれはどうなっている、ここはどうするんだ」と重箱の隅を突くようなリスクの洗い出しを行い、結果的に「時期尚早だな、さらなる検討・精査を続けてくれ」ということで潰されるのがオチでしょう。」(130ページ)

■「創造的な人々は常に目標を持ち、挑戦を続けている、だからこそ知的パフォーマンスを老齢になっても維持し続けられるのではないか、というのがチクセントミハイの仮説です。 チクセントミハイがリサーチの対象とした「創造的な人々」は、人生のそのときそのときで達成したい目標、挑戦すべき課題がクリアで、それについて語れと言われれば、いつまでも語り続けられるような情熱を持っていました。」(145ページ)

■「我が国から名経営者や英傑と呼ばれる人が出てくるのは、いつも時代の端境期であることをあたらめて思い出してください。(中略)オッサンが重要な職責を占拠している。これが、良い業務経験を積めない一つ目の理由です。」(150ページ)

■本書の主要なメッセージのまとめ(196ページ)
 1:組織のトップは世代交代を経るごとに劣化する
 2:オッサンは尊重すべきだという幻想を捨てよう
 3:オピニオンとエグジットを活用してオッサンに圧力をかけよう
 4:美意識と知的戦闘力を高めてモビリティを獲得しよう

■「「学ぶ」と「働く」がシーケンシャルに連結される人生モデルがこれまで一般的だった日本ですが、今後は「学ぶ」と「働く」がパラレルに動く人生モデルが主流になっていくでしょう。 そしてまた、「学ぶ」ということは、本質的な意味での「若さ」を保つ秘訣でもあります。なににでも好奇心を示し、新しいことをどん欲に学び続けようとする人は、一生「老いる」ということがありません。(中略)年をとっただけで「老いる」ということはありません。つまり「オッサン」というのは、好奇心を失い、謙虚さも失い、驚きながら学び続けるという姿勢を失ってしまった人たちのことを言うのです。」(207ページ)

4.購入前の自分に薦めたい度

★★★★★(5段階中5)

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