1.書籍情報
本間浩輔著、ダイヤモンド社、2017年3月発行、244ページ
2.購入した経緯
1on1のバイブル。上司の勧めで、部下に1on1を行うことにしたのがきっかけで購入。
3.読書メモ
本書は、1on1の小手先のテクニックを紹介するものではなく、本質的な意義を考察する本。そのため、コロナ発生の約3年前の発行であり、当時と今とではかなり働く環境が異なっているが、今でも通じる。
■ヤフーが1on1に取り組む理由:①社員の経験学習を促進するため、②(ヤフーの人材育成の基本方針である)社員の才能と情熱を解き放つため(54ページ)
■「経験学習とは、文字通り経験から学ぶことに重きを置く人材育成の方法で、職場での経験を学びに換えて、次の仕事経験に活かしていくという考え方です。(中略)経験学習を促進するためには、経験をすることだけでなく、経験を学習に変換するアクション(振り返り)が必要で、それが1on1です。」(55ページ)
■「社員の才能と情熱を解き放つとは、ヤフーの社員が、仕事や仲間からの支援をきっかけにして自らの才能に気づいて、自らのエネルギーがあふれ出す情熱を解き放つような仕事をするような会社にしたいという思いを言葉にしたものです。」(58ページ)
■社員の才能と情熱を解き放つには:①いろいろな仕事を経験して、②上司や職場の仲間から観察してもらい、③経験を振り返りながら自分の職業観について考える(59ページ)
■「1on1は、業務として、定期的かつ対話に集中できる環境で、コミュニケーションを行います。話すべきことを、集中できる環境で話すことができる。これがポイントです。これまで「あの上司は忙しくて自分の個人的な相談をするのは気が引ける」と思っていた部下も、部下のことを知りたいと思っていた上司も気兼ねなく1on1をすることができます。」(64ページ)
■1on1の効果(部下の視点):①忙しい上司を捕まえて、業務の相談をできる(「経験学習を促進させる」こととはやや離れるが、相談をしながら、上司が質問をしたり、部下の学びを聞いたりして「経験学習を促進させる」に結び付けることは可能。)、②目標管理制度について、中間評価をタイムリーにもらえる(67ページ)
■「「今日は何を話そうか」という切り出しは、ヤフーの1on1の考え方を表す象徴的な一言です。この切り出しの要諦は、部下がテーマを決めることです。なぜなら、1on1は部下のために行うものである、上司が聞きたいことを聞く場ではないからです。」(73ページ)
■「聞き上手の共通点。それは、高等技術というよりも、うなずきや相槌、そして体の向きや姿勢といった基本的な要素であると思います。(中略)部下はいつの間にか、思ってもいないことを話すようになり、上司からヒントをもらわなくても、話しながら自分で答えを出したり、納得したりして満足して1on1を終えていく。つまり、相手に安心感を与える動作を駆使することによって、話しやすい雰囲気や、上司と部下との信頼関係を構築することができているのだと思います。」(107ページ)
■「アクティブリスニングで興味深いのは、多くのケースで、聞き手はオウム返しをしているだけだと実感するのに対し、話し手は、聞き手がオウム返しをしているとは感じないことです。むしろ、「じっくり話を聞いてくれた」という感想を持つことがほとんどです。」(111ページ)
■「私は、社内の研修において、「上司が投げかけた質問に部下がすぐに答えられないときは、『部下が脳みそに汗をかいて考えている』ときだから、大切な時間だよ」と話をすることがあります。そういうときには、答え=言語化を急かしてはいけません。コーチングやカウンセリングでは「沈黙を大切にする」という言い方をしますが、基本的には同じことです。」(117ページ)
■「「部下が活躍する舞台をつくるのが上司の仕事」であり、それができない社員は管理職からは外れてもらうというメッセージを示しました。ヤフーに限らず、会社には管理職が向く人と向かない人がいます。これは良い悪いではなく、パーソナリティやこれまでの経験によるものです。部下のマネジメントが向かない人は、無理に管理職にならず、プレーヤーとして才能と情熱を解き放つ仕事ができればよいと私たちは考えています。そのため、ヤフーにとって1on1をうまくできないということは、管理職も不向きであるかもしれないということも繰り返し伝えました。」(158ページ)
■1on1の日時は、木曜日午後3時から5時がベスト。時点で水曜午後、金曜午後。木曜日であれば1on1をした後に宿題などのタスクができる。金曜日の遅い時間だと、宿題は忘れてしまうし、月曜日や火曜日だと先週のことを覚えていない。また、午前中は集中タイムなので避けた方がよい。(166ページ)
■Q:年上のベテラン部下から1on1は不要と言われた。
A:1on1は誰にとっても有効な内省手段。hしかし、実施目的や効果について、認識を一致させないまま無理強いしても、成果は得られない。そもそも、不要と言ってくるのは、信頼関係が構築できていない可能性あり。1on1を始める前に、普段のコミュニケーション頻度を上げ、互いに苦手意識を緩和しましょう。このとき意識すべきは「コミュニケーションは頻度」ということ。(186ページ)
■Q:進捗確認なら毎回できるが、キャリアについての話を毎回するのは難しい。
A:毎回キャリアをテーマにする必要はない。部下の考える将来像が変化したとき、それについて話せる場であれば十分。(189ページ)
■Q:何を話すか部下に聞いても、特にないと言われる。
A:そういう事態に備え、2、3テーマを用意しておく。そのためには、普段から部下を観察しておく必要がある。また、こちらからテーマを切り出すのは、あくまで部下からテーマが出てこなかったときに限る。(190ページ)
■「経験のバリエーションを増やす方法としては、「異動は最大の人材開発」というスローガンのもと、社員の経験を積極的に増やしていくようにしています。(中略)人事異動によって、社員は複数の経験ができるだけでなく、複数の上司や職場の仲間から、観察してコメントをもらうことができます。異動せずに同じ部署に留まるケースと比較すると、経験学習を深く浸透させることができます。」(207ページ)
■「才能と情熱を解き放てる舞台さえあれば、人はその才能をさらに開花させようと思いますし、情熱を注ごうとします。その際、会社、そして上司のすべきことはその舞台を整えることです。1on1はそのためのコミュニケーションの場でもあります。自分にはその仕事の才能がない、情熱を注げないと思っている部下がいれば、1on1を通じて、部下と共に考え、悩む。そして答えが出なくても、少しでも答えに近づくような努力をする。そこから何かをつかみ、上司も部下も成長する。それが理想です。」(210ページ)
4.購入前の自分に薦めたい度
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